今日もブログ日和

犬・本・料理大好き!節約しながらエンジョイシニアライフ♪

2023年11月に読んだ本

図書館で順番を待つ新刊の間にはさんで、先月は再読月間。

5冊の再読本は年数を経てもやはりおもしろい。

クラフト・エヴィング商會のユーモアはやはり大好き!

そして三浦しをんさんの人物や心情の表現はやはり深いなぁ!


読んだ本の数:11


夫妻集夫妻集
考えの違いや望むものの違いは、夫婦とはいえ多々あるもの。すれ違いかけた4組の夫婦が、皆それぞれ解決への道を歩む。読後感もよく、作者らしい誠実な人々ばかりでいいなぁと思うものの、いやいやこんな風にはと古女房は思ってしまう。「一組」ではなく「一人」として尊重することの大切さは伝わってきた。出版業界の内側を少し覗けたようなのはおもしろかった。「短編は売れにくいので連作に」まさにこの作品も登場人物それぞれの繋がりが楽しかった。
読了日:11月05日 著者:小野寺 史宜


じつは、わたくしこういうものですじつは、わたくしこういうものです
文庫で何度も読んでいるのに、好きすぎて単行本を購入。やはり大きい写真はいい!実存しない職業の人々の語りと写真(?)。どれもあったらいい。私の身辺がなにかただならぬ気配のとき、「警鐘人」にシンバルを鳴らしてほしい。いい案が浮かばないとき「ひらめきランプ交換人」に飛んできてほしい。迷ったときの「選択士」にも。「チョッキ食堂」のチョッキと食事を堪能し、「冬眠図書館」でコーヒー・パン・シチューをいただき温かいブランケットに包まれて一晩中本を読む。そんな至福の時間を「時間管理人」に預かってもらう。どれもいいなぁ!「バリトン・カフェ」アルトの私は入れないのか?残念!
読了日:11月06日 著者:クラフト・エヴィング商會


らくだこぶ書房21世紀古書目録らくだこぶ書房21世紀古書目録
文庫本で読んだときにも、発想に驚き充分楽しんだと思ったが、単行本で再読して、古書の丁寧な造形と写真の素晴らしさにあらためて感心した。2000年発行の初版を買い求めてよかった。それこそ「古書」?2052年から送られてきた古書目録の未来の古書はどれも魅力的だ。答えだけが載っていて質問を考える「A」、小人たちのガリバー観察記録「大いなる来訪者」、タイトルから惹かれる「その話は、もう3回きいた」など注文してみたい。未来と現在がぐるっとひとまわりして丸くなるラストは、何度読んでも心が弾む。宝物がまたひとつ増えた。
読了日:11月07日 著者:クラフト・エヴィング商會


ないもの、ありますないもの、あります
文庫本もあわせて何度再読したことだろう。何度読んでもおもしろい。実存しないものの説明と絵と注意書。「左うちわ」「自分を上げる棚」「堪忍袋の緒」「一筋縄」「助け舟」そろそろ「冥土の土産」もほしいかも・・と読んでいった。今回はとりあえず(「ビール!」とは続かない)商品の取り扱いの注意に注目してみた。なんと教訓的な!「確かにね」とニヤリとしながら読み終えた。
読了日:11月08日 著者:クラフト・エヴィング商會


注文の多い注文書 (ちくま文庫)注文の多い注文書
以前、図書館でこのタイトルに惹かれて単行本を読んだ。そこでクラフト・エヴィング商會に出会い吉田篤弘さんのものを含め、すべて読むつもりで集めた著作の数々。今回は文庫本で。実存する小説の中の、実存するとは思えないものの数々。それらの注文書に基づき、応えの品が納品書と共に届き、また受領書か送られる。どれも丁寧な文章で綴られ、夢幻のような世界は不思議でまた心地よい。この「ガス灯のある袋小路」を、私はまたいつか訪ねたくなるのだろう。
読了日:11月11日 著者:小川 洋子,クラフトエヴィング商會


すぐそこの遠い場所すぐそこの遠い場所
空想の国アゾットを旅する「クラウド・コレクター」を以前読んだが、そのアゾットに関する事典という想定。小分けの説明?お話?で、「クラウド・コレクター」よりわかりやすくさらに楽しめた。「回覧板」「観光」「睡魔」「空飛ぶじゅうたんの上のものすごく太った猫の話」「夏の図書館冬の図書館」「紙石鹸詩集」ニヤニヤしながら私の思考まで自由に羽ばたいていく。眠れぬ夜に、好きなページを開いて読むとよい本だ。
読了日:11月12日 著者:クラフト・エヴィング商會


青瓜不動 三島屋変調百物語九之続青瓜不動 三島屋変調百物語九之続
三島屋シリーズ9巻目はこれまで同様哀しく恐ろしい場面も多かったが、温かく優しい想いのこもった話が多かった。「青瓜不動」のうりんぼうたちのきゅうきゅうという声はかわいらしく、「だんだん人形」の文さん・富ちゃんの掛け合いはほのぼのし、小さな土人形のキリリとした戦い姿も目に浮かんだ。「針雨の里」の風舞さんたちを、富次郎にはぜひ描いてほしい。恃む(たのむ)漢(おとこ)などの表記に想いが伝わり「いのちまもり」という言葉も心に残った。
読了日:11月17日 著者:宮部 みゆき


777 トリプルセブン777 トリプルセブン
殺し屋シリーズ4冊目。相変わらず次々と、申し訳ないほどカラッと人が亡くなるが、ここでも天道虫は強い。本人は「自分は運が悪い」と思っているようだが実はかなり幸運だと思う。かつての蜜柑と檸檬のコンビのように、マクラとモウフ、高良と奏田のコンビにはどこか寄り添ってしまう。スイスイ人への僻み(?)は「全くねぇ」と思うし、実は博識深淵な(?)コーラとソーダの言葉は含蓄が深い。「梅は梅になればいい。リンゴはリンゴになればいい。バラの花と比べてどうする。」メモしなきゃと一瞬思い、いやいやサラッと楽しむ本だった。展開が早くおもしろかった。
読了日:11月21日 著者:伊坂 幸太郎


商う狼 (新潮文庫 な 107-2)商う狼
木挽町のあだ討ち」「大奥づとめ」と作者のあとを追った3作目。永代橋の崩落で妻子を亡くしたことをきっかけに、三橋会所を興し・十組問屋頭取・町年寄次席と上り詰めた杉本茂十郎の生涯。商人として政に金も出すが口も出す。しかし「毛充狼」と呼ばれた茂十郎の牙も、「お上」の前に砕かれる。自腹を肥やすためでなく、江戸の町の繁栄のために駆け続けた茂十郎と、兄のように彼を支え続けた札差弥三郎。ふたりの男の友情物語でもあった。現代の経済人に茂十郎の再来は求められないものか。
読了日:11月25日 著者:永井 紗耶子


まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒
続編を読もうと再読。おもしろかったという記憶はあるものの、細部をほとんど忘れていた。最後の多田の過去など、あらためて胸が苦しくなるようだった。まったく趣の異なる作品を生み出し、どれも読みやすく心引かれる三浦しをんさんの力量をあらためて感じた。「幸福は再生する」多田にも仰天にも、由良にもルルにも・・そうあってほしい。チワワのハナの幸福はすでに再生しているようだ。とりあえず「曽根田のばあちゃん」の栄光の日々を楽しみに続編「番外地」へ!
読了日:11月28日 著者:三浦 しをん


まほろ駅前番外地 (文春文庫)まほろ駅前番外地
前作に出てきたまほろ市の人々のスピンオフ短編集。多田や行天はもちろん、由良・曽根田のばあちゃん・岡夫人、すべての人が愛しくなってしまう。困ったことに、星までも憎めなくなってしまった。中でも岡夫人がいい。「自分には陰がないから多田に心惹かれるのか」という気持ちもよくわかるし、「行天が今の方が幸せに見える」という観察も嬉しい。

岡夫人の夫に対する心情「諦めと惰性と使命感とほんの少しのあたたかさ。こまごまと毎日働き、自分の役目を果たすときの心情と同じ感覚で、細く結びついている。そんな関係を、一言で表す言葉はない。ないから戸惑う。あいかわらず『夫と妻』ですませて安穏としていられる夫に苛立ちを覚える。でも一緒にいるのをやめたくない。その理由を『愛』と言えたなら、すごく簡単なのだけど。」そうなのだ!わかる!

こうも言っている「あまりにも長くともに時間を過ごしたために、夫婦であるという事実すらも鈍磨してきている。けれど心の中にある、灯火のようなものは消えないのだ。男女や夫婦や家族といった言葉を越えて、ただなんとなく、大事だと感じる気持ち。とても低温だがしぶとく持続する、静かな祈りにも似た境地。」うん!うん!

三浦しをんさん、老夫婦のまとめきれない思いをよくぞ文章にしてくれた!

読了日:11月30日 著者:三浦 しをん