日本生まれのイギリス人カズオ・イシグロのセンセーショナルな内容の本です。
350ページのほとんどはごく普通の青春物語のようであり、
幼児期から思春期の揺れる思いが豊かにゆったりと語られています。
ところが100ページ目に複線があります。
素晴らしい環境の全寮制の学校かと思われる所の教師が、夢を語り合う子どもたちに向かって、
「いいえ、あなた達に老年はありません。たぶん中年も・・・」苦しそうに語ります。
最後の50ページは複雑な思いでページをめくるのを急いでしまいます。
もしかしたらそう遠くない未来に実際に起きるかもしれない問題です。
科学の進歩と命の尊厳と、既に私達人類の議論のテーブルに上がっている問題です。
未来を一足先にのぞいたような思いの物語でした。