本当に暑かった8月!怪談やミステリーに量を求めたり、オリンピックの応援で暑くなったり。地元が出てくるドラマも嬉しかったけれど、なじみの場所が出てくる小説もなかなかおもしろかったです。
読んだ本の数:6
大江戸怪奇譚 ひとつ灯せ (文春文庫 う 11-11)の感想
江戸の商人・医師・学者・役人・唄の女師匠など、様々な人が月に一度集まる「話の会」。そこでは毎回怪異な話が語られる。やがて最終章「長のお別れ」で彼ら自身の人生が・・この章が一番惹かれ、そして恐かった。なにかを覚悟してしまう者、「生きたい」と願う者、彼らの道が別れる。解説で引用された「さよならを言うのは少しだけ死ぬこと」というレイモンド・チャンドラーの作品の一節が、この小説とリンクする。夏にふさわしい怪談を読みながら、死について考えさせられた。
読了日:08月06日 著者:宇江佐 真理
ま、いっか。 (集英社文庫)の感想
著者の2年後に東京で生まれ育ったので、町の描写や人々の暮らしには懐かしい場面が多かった。『世代には世代の言葉がある。大人の世代がそれをまねることが問題。自分の使うべき正しい日本語を守ることで正しくバトンタッチできる』に賛成。『年を取るごとに時間が加速度をつける。それに抗うには【自楽】しかあるまい。仕事も勉強も結構だが、快楽や幸福感を犠牲にしてしまえば、時間は矢のように過ぎてしまう。』老境に入った身としてはありがたい言葉だ。「まっ、いっか。」で行きたいとあらためて思った。
読了日:08月09日 著者:浅田 次郎
月の裏側 (幻冬舎文庫 お 7-7)の感想
堀が縦横に走る町。そこで住民が突然、姿を消しては数日後に戻ってくる。しかも、その間の記憶を失くして。彼らは一見元の姿だかなにか違う・・。はじめは取っ付きにくかったが謎が深まるに連れどんどん惹き付けられた。しかし、読み終えてこれはなんだったのだろう。異星人の乗っとり計画なのか、古い土地に存在する神や妖怪の仕業なのか。真実はわからず幕を閉じるが、戻ってきた聡明な主婦の言葉が記憶に残る。「(戻ってから)平穏な核のようなものができて、いつもそれに寄り添っているような気がするの。」意味の深い小説だった。
読了日:08月17日 著者:恩田 陸
【Amazon.co.jp限定】頂を目指して(ダウンロード特典:撮り下ろしオフショット写真1枚)の感想
石川祐希選手のアタックする姿に魅了され、バレーボールに注目するようになってまだ日が浅い。石川選手が初めてイタリアへ渡った当時の映像を見て、どうして今、心身共にこれほどたくましくなったのだろうという興味からこの本を手にした。バレーボールが大好き、そして良い指導者や仲間に恵まれ、なにより自分自身を信じて励んできたことがよくわかった。おいしい食べ物より、必要な栄養を重視し、ルーティンを決めずにその時のやるべきことをやる。この本が書かれたときの頂はパリだっただろうが、ロスの頂を極めることを期待して追い続けたい。
読了日:08月19日 著者:石川祐希
中野のお父さんの感想
出版社勤務の娘が疑問や不思議を感じたときに頼りにするのは国語教師の父親。父親がスラスラと問題を解決する様を描いた短編集。著者らしい人間に対する深い洞察や、さりげない優しさを感じる話が続く。しかし、自分自身の文学の知識の浅さを思い知った。この父娘のような造詣があったらもっと楽しめたのに・・。
読了日:08月22日 著者:北村 薫
共鳴 (中公文庫 と 25-34)の感想
書店で「地元が舞台」というポップの言葉につられて買った未知の作家の本。なるほど、あの道、この店、馴染みのある名が出てくるのがまず楽しかった。もと刑事の祖父が、引きこもりの孫を再生させる内容。麻薬密売人や介護、そして尊属殺人かと思われる近隣の事件も盛り込まれている。今、あまりいなそうな気骨があり世話好きな祖父だが、そのせいか彼の姿があまり思い描けなかったのが残念。とはいえ、おもしろく一気に読んだ。
読了日:08月28日 著者:堂場 瞬一