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「本所深川ふしぎ草紙」

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「本所深川ふしぎ草紙」 宮部みゆき

新しい本ではありませんが前から気になっていました。
「回向院の茂七親分」がかかわる、不思議話に関連づけた7編の人情話です。

子供の頃から何度も境内を歩いた両国回向院。その他の地名も懐かしいものばかりです。
昨日、東京下町の実家への往復の電車の中で読み終えました。
母に見せると、「ああ、『深川の7不思議』ね。」と熟知の様子。やっぱり下町っ子です。

「置いてけ堀」「送り提灯」等7編の中のひとつ「片葉の芦」は、
大店の主人、藤兵衛と跡取り娘お美津親娘の話です。

町中で殺されてしまった父藤兵衛は商才はあるものの「鬼」「守銭奴」と陰口をきかれています。
そんな父を恨みまた恥じ、娘お美津は子供の頃から貧しい者たちに金品を与ることに心を砕きます。
実は「鬼」「守銭奴」はある意味「表看板」で、藤兵衛が陰で恵まれない人々を助けてきたことは、
茂七親分と老番頭など一部の人だけの知るところでした。

番頭の言葉が真実を語ります。
「旦那様のおっしゃっていた『恵む』ことと『助ける』ことの差は私のような者にはわかります。
 でもお内儀さん(お美津)にそれを知らせるのは無理でございましょう。
 これから商いを通してどれほどにか苦労して、
 おいおい悟っていかれることがあればよろしいのですが。」

「恵む」と「助ける」の違い。
藤兵衛は身よりのない貧しい子どもたちが力強く生きていける大人になるように尽力してきました。
我が子にその思いを伝えることはできませんでしたが、現代の教育にも通じるのではと思いました。
また国際貢献などにもあてはまるのでは・・・そんな大げさなことも考えましたが、
とにかく、ちょっぴり切ないけれど清涼な、心温まる人情話の数々でした。