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2023年6月に読んだ本

今月はなぜか「西遊記」月刊でした。中島敦の描く沙悟浄、それに触発されて万城目学が描いた猪八戒。そして月をまたいで今、読んでいるのは伊坂幸太郎「SOSの猿」孫悟空が重要な役割を果たしています。いや~!おもしろい!全く興味もなかった中国文学を覗くチャンスか?いや~「西遊記」止まりの気がしますが・・。


読んだ本の数:8

余寒の雪 (文春文庫)余寒の雪 (文春文庫)感想
江戸庶民の和かながらも芯の通った長屋話・・と、思って読み始めたが、またひと味違った歴史を紐解くような短編集だった。「藤尾の局」の大奥の暮らしとその後「出奔」の御庭番「蝦夷松前藩異聞」のアイヌ民族との関わりなど興味深かった。今で言う「推し」も確かに江戸の町にはいたかもしれない。時々立ち寄りたい宇江佐ワールドを堪能した。
読了日:06月06日 著者:宇江佐 真理


活動寫眞の女 (集英社文庫)活動寫眞の女 (集英社文庫)感想
昭和40年代の京都が舞台。映画全盛の頃亡くなった大部屋女優の霊に恋をした京大医学生を、友の視点で描いた話。五山の送り火をはじめ、静かな風景描写、そして柔らかな京言葉のせりふで始終不思議なノスタルジーに包まれ心地よく読んだ。3人の若者、霊となった役者たち、その純粋さが痛々しい。映画からテレビへの変遷なども描かれ興味深かった。
読了日:06月12日 著者:浅田 次郎


思い出したら、思い出になった。 (ほぼ日ブックス)思い出したら、思い出になった。 (ほぼ日ブックス)感想
なんだか犬友と話しているみたい。「ブイヨンちゃんは何歳ですか?」から始まって「うちの子も一緒に寝るの。しかもボールをくわえて。」「そういえばこの間こんなことがあって。」「コロッケは最強よね。」「上回ろうとしたら、下回っちゃうことが多いよね。」・・他愛もない会話なのに、なんだかホッコリして、「じゃ、またね、ブイヨンパパさん。」そんな読後感だった。
読了日:06月14日 著者:糸井 重里


乱鴉の空乱鴉の空感想
久々の「弥勒」シリーズ第11巻。人の心の裏の裏を抉るような表現は、相変わらず鋭い。まるでギラリと光る刃のように。自分が普段思っていることの根元は、本当は違うところにあるのではと、ストーリーを離れ我と我が身を振り返ってしまう。あさのあつこさんの洞察力、恐るべし。信次郎・清之介・伊佐治の磁石のように引かれ合い、同時に恐れすら感じている3人の関係は続く。新しく登場したまれ吉が、どんな働きをするのか、あるいは何が狙いなのかも楽しみなところだ。
読了日:06月22日 著者:あさのあつこ


悟浄出世悟浄出世感想
伊坂幸太郎が選んだ短編集「小説の惑星オーシャンラズベリー」で「悟浄歎異」を読みとても感動した。その前作と言える「悟浄出世」から読んでみたくなった。自分はなぜ人間でなく妖怪なのか。自分とは一体何なのか。思い悩む悟浄がありとあらゆる妖怪たちにその答えを求めようとする。妖怪たちのどの説にも、私自身なるほどと思える部分がある。しかし、いずれの説にも救われない悟浄は、やがて考えることより動くことという思いに至り、そこで悟空一行と出会う。妖怪でありながらなんと人間的でしかも真面目で内省的な悟浄であったことか。
読了日:06月24日 著者:中島 敦


悟浄歎異 ―沙門悟浄の手記―悟浄歎異 ―沙門悟浄の手記―感想
伊坂幸太郎が選んだ短編集「小説の惑星オーシャンラズベリー」の中で読んで感動し再読したのだが、初読と同じように胸が熱くなった。悟浄が描く仲間、悟空・八戒そして師である三蔵法師、全く違うのに誰もが魅力的だ。悟空の前進のみのみなぎる闘志・豊かな知恵、八戒の「今」を楽しむ享楽主義、三蔵法師の全てを受け入れ心を平らに保つ高貴なまでの強さ、全てに憧れる。敬愛し合う彼らを観察し、法師の寝顔を見て「ポッと点火されたような温かさを感じる」悟浄もいい。悟空の心の熱い火が燃え移るようなこの作品を、これからも何度も読み返したい。
読了日:06月26日 著者:中島 敦


いやし 〈医療〉時代小説傑作選 (PHP文芸文庫)いやし 〈医療〉時代小説傑作選 (PHP文芸文庫)感想
朝井まかて宮部みゆきの2作品は既読なので懐かしかった。あさのあつこ以外の二人は初めて接した作家。ほとんどがシリーズ物の中の1編ということでとりつきやすさの差を感じた。やはりアンソロジーという細切れでなく、じっくり読んだ方がいいのかもしれない。病の原因を探りつつ、その裏に潜む人の心の病巣を探る、そんな江戸の時代の医師たちの目を現代の医師にも持ってほしい・・というには今は忙しすぎるのかもしれない。
読了日:06月26日 著者:宮部 みゆき,朝井 まかて,あさの あつこ,和田 はつ子,知野 みさき


悟浄出立 (新潮文庫)悟浄出立 (新潮文庫)感想
伊坂幸太郎「小説の惑星」で中島敦「悟浄歎異」を知り、「悟浄出世」を経て、本作「悟浄出立」へ、悟浄を追い続けてしまった。悟空・悟浄・三蔵法師の生き様に惚れ惚れしてきたがついに八戒にも。「勝敗を決めるのは十万の兵の死ではなく、たった一人の指揮官の精神の死」という八戒の言葉に、ふと、今も続けられている侵略のことを思った。「過程がもっとも苦しいがそこに貴いものが宿る」と思い至った八戒。悟空に気づかされたという。悟空の持つ力と、そこに惹かれる八戒もいい!中島敦万城目学両氏の「西遊記」に心酔した。
読了日:06月29日 著者:万城目 学