どちらの作家も未読の作品があるのが嬉しいです。
伊坂幸太郎はわずかになってしまいましたが、浅田次郎はまだ山ほど!
その中で、この作品「天切り松闇がたり」シリーズをなぜよけてきたのでしょう?
任侠物だから?
思えば、先月の伊坂作品「陽気なギャング」シリーズも犯罪者、
「天切り松」シリーズも主役は犯罪者。それなのになんと愛しい!
ブログを更新するのも忘れ、盗人一家に心奪われっぱなしの、
そして幸せな1ヶ月でした。未読の方、お勧めです!
読んだ本の数:11
あんなに あんなに
もうじき子供が生まれる息子に「ヨチヨチ父」と共にプレゼントし、私も再読。本当にどれもこれもその通り!子育てに限らず後になってふりかえれば、「あんなに○○だったのに」と思えるようになるのかもしれない。笑ったりしんみりしたり、「これから子育て」の息子よりも、たぶん経験者の私の胸に染みる本だ。
読了日:06月04日 著者:ヨシタケ シンスケ
ペッパーズ・ゴースト
ペッパーズ・ゴーストという言葉が最後の方で登場した。イギリスの劇場で、ジョン・ペッパーズという人が考案したガラスと照明を使ったトリックで、「幽霊」のようなものを客席に見せる技法だそうだ。現実と、小説から生まれた虚構が入り交じって進み、やがて2つが重なっていく。「クジラアタマの王様」を思い起こさせるような最近の伊坂さんの傾向か。他作品のような「とにかくおもしろい」という感想ではなかったが、それなりに。愛すべき存在のロシアンブルとアメショーが、ラストでどうやら無事らしいとわかったのは嬉しかった。
読了日:06月04日 著者:伊坂幸太郎
スモールワールズ
どの短篇も重いが、ハッとするような話ばかりだった。最初の「ネオンテトラ」と最後の「式日」の繋がり、「花うた」の犯罪被害者と加害者の心のふれあいには驚き、感慨が深かった。「魔王の帰還」の体も心も巨大な姉、「愛を適量」の息子になった娘の話は、悲しくも生きる力強さを感じられ好きだ。元娘だった佳澄の言葉「理由とか原因を他人に紐づけてると人生どんどん不自由になる」という言葉には納得。人は強く同時に弱く、優しく同時に怖い存在だと思った。これまでも、たぶんこれからもあまり縁のない作家だと思うが、読んでよかった1冊だ。
読了日:06月06日 著者:一穂 ミチ
欲が出ました
ちょっと重い本を読んだのでこの本を再読。人生を語っていることには変わりないのだが、やはりヨシタケシンスケ風がいい!「期間限定の100年」を「食べ放題飲み放題生き放題」、「肯定係」を胸に住まわせ「気がすむ」ように生きてみよう!まわりに迷惑をかけない程度にね。「心にはめる軍手」も忘れずに。(^_^)v
読了日:06月07日 著者:ヨシタケ シンスケ
天切り松 闇がたり 1 闇の花道
「生の酒がのどを駆け下りていく時に感じる快感に似た、登場人物の心意気の熱さが天切り松を読む愉しさです。」解説の降旗康男監督の言葉を読んだときその通りと思った。義賊の一党、目細の安吉親分・説教寅弥・黄不動の栄治・振袖おこん・書生常、だれもが惚れ惚れするほどの人柄で、幼い松蔵をまっとうな人間に育てていく。盗賊ではあるのだけれど「まっとう」の言葉が頭に浮かぶ。栄治と継父の伝法な言葉の中の温かいやりとり、強面な寅弥の優しさ、吉原の人間であることを松蔵にわびる友、康太郎、何度も胸が詰まった。嬉しいシリーズに出会えた。
読了日:06月10日 著者:浅田 次郎
天切り松 闇がたり 2 残侠
清水次郎長一家の小政の登場には胸が躍った。ありえないのに大歓迎!一時代前の仁義に惚れ惚れした。ひょっこり登場するキーパーン永井荷風にも。目細の安吉一家はもとより、松蔵の友人吉原遊郭の跡取り康太郎少年も、皆、なんという素晴らしい心意気なのだろう!こちらまで背筋が伸びる。中でも黄不動の栄治兄ぃは本当にかっこいい!ああ!会ってみたい!人としての筋を通し、時に意地を張り、その裏に優しさをひた隠し・・ああ!浅田次郎だな~とうれしくなる。うっとりしたまま第3巻へ。
読了日:06月14日 著者:浅田 次郎
天切り松 闇がたり3 初湯千両
感動の第3巻、無骨な中に真の優しさをたたえた寅弥に参った。軍曹時代の辛い経験に基づいた彼の思いを、戦争未亡人の母子が最後には受け入れてくれたことが嬉しかった。サーカスで育った仁太、郭の跡取り康太郎、盗人の一味松蔵、後ろ指指されそうな境遇の3人の少年の意志のなんと崇高なことか!銀次・安吉・松蔵、血縁のない「親子」と言っていい3代の情にも胸打たれた。「自分よりも気の毒な人間のいるうちは、辛抱をしなけりゃいけない。上を見るより、下を見て歩け。自分よりかわいそうな人間だけをしっかり見つめて歩くんだよ。」安吉の言葉が胸に残る。
読了日:06月17日 著者:浅田 次郎
天切り松 闇がたり 4 昭和侠盗伝
相沢三郎による暗殺事件、愛親覚羅溥傑・浩夫妻の結婚、事実に虚構の目細一家がからむ。でも、本当にこんな裏話があったならなぁと心から思う。寅弥・栄治・おこん・常、みんな心根が優しく、また、なんと格好いいのだろう。安吉親分の筋の通った子分育てのなせる技か。「目細の安吉は、味方のいねぇ人の味方でござんす。」惚れ惚れする。ちなみに溥傑さんは浩さんを生涯慈しみ大切に生きたという。
読了日:06月22日 著者:浅田 次郎
天切り松 闇がたり 5 ライムライト
ああ!最後の5巻目を読み終えてしまった!目細一家ロスに備え、「読本」を注文。格好よすぎる親分子分の心意気にうっとりしっぱなしで、しばらく心の中で任侠を気取ってしまいそう。「号泣」などという大袈裟な表現はしたくないが「琥珀色の涙」では文字がかすんで困った。栄治とおとっつあん、どちらにも惚れ惚れする。サーカスの仁太、郭の康太郎、2人の少年のその後が語られなかったのが残念。たぶん2人とも大成し、世界の違う松蔵のよき友であり続けたとかってに想像する。チャップリンの映画が見たくなった。
読了日:06月24日 著者:浅田 次郎
おかんメール
お腹が痛いほど笑ったのは久しぶり。よくありそうで、なんでそんなミスを!とあきれるようなミスメールの数々に楽しませてもらった。そういえば91才の母からのメールにも、笑える間違いがよくある。時折、友達に「あなたの打ち間違いは楽しい」と言われてしまう私も、りっぱな「おかん」の一員なのかもしれない。
読了日:06月25日 著者:
天切り松読本 完全版
著者本人が「浅田家のできのいい長男」と呼び、絶筆は「天切り松」にしたいというシリーズ。読み終わった本は処分するものが多いが、本編5冊にこの「ガイドブック」を加え本棚の特等席を与えておきたい。明治大正昭和の歴史上の事実に、目細一家とそのまわりのあまりにも粋な登場人物が絡み、どっぷりとはまってしまった。母は浅草生まれ、やはり下町育ちの私としては「スカイツリーは認めない」の1節に同感!なにか違うのだ。大判の書籍として発行されたら、さらに嬉しかった。
読了日:06月30日 著者:浅田 次郎