「娘に語るお父さんの歴史」 重松清
42才のお父さんが、15才の娘に、自分が生まれてからの日本について語りながら、
子ども時代は幸せだったのか、今の子どもは幸せなのか、いっしょに考えていくお話です。
40代、50代の親世代、10代、20代の子ども世代、どの世代にとっても、
今の日本や幸せについて考える時のひとつのヒントになる本だと思います。
とても読みやすいし、お勧めです。
テレビと共に生まれ、聖火に旗を振り、月からの映像に興奮し、永遠のヒーローはアトム。
まさにそんな自分自身の歴史を読んでいるような感じでした。
戦後のベビーブームが収まり出生率が急激に落ちたとき、私は生まれました。
教科書は私のすぐ下の学年から無償になったのでした。
「子どもたちの量より質」と戦後から現代までのどの時代の子どもたちより、
長い授業時間を経験したのも私の年代でした。
大人達は必死に走りながら、私達子どもたちの後ろに明るい未来を見ていたのでしょう。
走り続けることが正しかったのかどうかはわかりません。
しかし文中の「全力疾走できる幸せ」この感覚はよくわかるのです。
ひたすら走り走り走り・・・そしてたどり着いたのが今の時代です。
戦争は知らないけれど、戦後の残り香をかすかに嗅いできた私の年代。
私達にできること、しなければいけないことは何でしょうか。
全力疾走の爽快感や待っているものへの期待感を、
子どもたちに持たせてあげられなくしてしまった責任の一端は、
私達にあるのだと思います。
「未来に幸せがあると信じて一生懸命おまえたち子どもを育てる。
そこから先の幸せの中身はおまえが自分でつくるんだよ。」
主人公カズアキ(和昭)が娘にかけた一言が心に残ります。