「博士の愛した数式」 小川洋子
事故により記憶が80分しか持たなくなった数学者の「博士」と、
家政婦、そして博士によって「ルート」と名づけられた彼女の息子の物語。
博士の書斎の静寂がこちらにも伝わって、静かな穏やかな時間が過ごせました。
情報過多の時代、80分ですべて記憶が削除される博士はむしろスッキリしていいのでは、
なんてとんでもない感想を一瞬持ってしまいました。
博士の身になればなんて辛いことでしょう。
まっすぐな心を持った家政婦、
豊かな感受性と、まさにすべての数字を保護するルートのような心を、
子どもながらに身につけている少年ルート。
物もお金もよけいな物は何もないけれど、
人としての潔さと優しさをふたりから感じました。
キーポイントのルートの誕生日、9月11日は私の誕生日。
「テロの日」以外に「ルートの誕生日」という呼び名がふえて、ちょっとうれしかったです。
本を読み終わり、映画がいっそう楽しみになりました。