高校の同窓会誌が届き、担任だったS先生の逝去を知りました。
29才の体育教師だったS先生が1年坊主の私たちをを引き連れ学校案内をすると、
あちこちから「よっ、馬!馬!」と男子の先輩たちから声がかかりました。
背も高く面長でサラブレットのようなS先生は上級生に人気があるようで、
新しい生活の不安が楽しみに変わった瞬間でした。
それは、教室へ戻っての挨拶でも・・。
「おまえら、勉強も部活もがんばるのはもちろんだが、それと共に、
人格の陶冶(とうや)をめざせ!」と口から泡を飛ばしながら熱く語りました。
「いかなる場でも人間として正しい行動が取れるよう自己研鑽すること」
と、後で調べてその意味を知りました。
私が高校に入った頃は、学生運動が絶頂(?)の時、都内では高校でも盛んでした。
中でも、私の高校はテレビのニュースにも出たほど。
入学後1月くらいは授業はなかったと記憶しています。
ある日、登校すると、2階の職員室が生徒数人に占拠されていました。
S先生は最先鋒となり外階段からそこへ向かい、生徒たちと交渉していました。
結局、全校生徒と先生方の話し合いでいろいろな変革がありました。
制服着用も自由になり、学校行事の決定も生徒の意見が取り入れられるなど。
S先生は逃げない信頼できる大人の姿を見せてくれました。
思えば、大学も似たようなもので授業がしばらくできなかったり・・。
そういえば入っていたサークルの顧問だった老経済教授も、
ヘルメット姿の学生の中央から逃げずに意見を述べていたっけ。
やはり逃げない大人でした。
教師に対して、よくない思いを抱いている人は少なくないかと思います。
幸い、私は小中高大と恵まれていたと思います。
何人もの先生の顔が浮かぶけれど、その筆頭がこのS先生かな。
ご冥福を祈りながら、これからも「人格の陶冶を目指しますよ、S先生!」