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2023年2月に読んだ本

偶然(かな?)芥川賞直木賞受賞作家新旧4人の本を読みました。新しい作家さんや新しい作品になにか宝石が見つかるかもしれない。そんな思いでつい手にしてしまうのだけれど・・。向田邦子さんの人の描き方はさすがだなというのが感想です。まぁ、自分がまぎれもなく「昭和の人間」というだけの話かもしれませんが。(^_^)


読んだ本の数:8


おいしいごはんが食べられますようにおいしいごはんが食べられますように
あまり好きになれない3人。特に仕事に関しては甘いけれど、甘いお菓子をよく作り職場で配るかわいい芦川さん。現実にもいそうだ。食に対する温度が極めて低い二谷さん、そういう人も結構いるのだろうと思う。中では押尾さんが共感できるところは一番多かったかなと思いつつ、あまりしっくりしない読後感だった。それでもたくさんの人を待って順番がやってきた図書館本は、まだ私の後ろに18人待っている!恐るべし、芥川賞
読了日:02月03日 著者:高瀬 隼子


烏金烏金
続編「はむ・はたる」を読むためにこちらを先に。前半、札差など金貸しのしくみなどややわかりにくいところもあったが、孤児集団の登場でがぜん勢いがついた。勝平の強さ賢さ仲間への篤い思いは、子供とは思えない。見上げたものだ。そして、勝平を慕い支えるトミ・ゲンタ・サンジ・テンも。過酷な経験をしたハチには、なんとしても心の安静と声を取り戻してほしい。故郷での隠居の誘いを断ったお吟婆さんには、江戸の長屋がよく似合う。子供たちのその後を楽しみに「はむ・はたる」へ!
読了日:02月08日 著者:西條 奈加


はむ・はたる (光文社時代小説文庫)はむ・はたる
スリや盗みで生きていた孤児集団が、心ある大人たちの力を借り、稲荷鮨売りを生業とするようになった「烏金」のその後。一番の理解者長谷部柾と力を合わせて様々な事件を解決していく姿は、明智探偵と少年探偵団と重なった。子供たちの賢さたくましさもさることながら、柾の母の凛とした姿勢がかっこいい。優しい柾と、この「婆さま」の慈愛のある厳しさの元、育っていく子供たちの今後も見てみたい。
読了日:02月11日 著者:西條 奈加


中庭のオレンジ (単行本)中庭のオレンジ
「息を吸うと、口の中に青空の青がお腹いっぱい入り込んでくるよう」という表現をはじめ、常夜灯の淡い光、花だけがいっぱいつまれた小舟、ずっと居続けたくなるような休憩室、吉田篤弘さんの表現にいつもながら心地よく包まれる。カウントシープ#5391に出番が来ますように。チューバとホルンのふたりがいつか本当に合奏できますように。マリアの小さな歌にひとりでも多くの人が耳を傾けてくれますように。自分以外の誰かのために祈りながら眠りにつく、そんな幸せをもたらしてくれる一冊だった。
読了日:02月12日 著者:吉田 篤弘


思い出トランプ (新潮文庫)思い出トランプ
正月ごとに放送されたドラマが懐かしくなり、数十年ぶりの再読。ドラマは昭和初期が舞台なので当然だが、本作の時代背景はそれよりかなり後のはず。にもかかわらず、時代ものを読むような隔世の感があった。と同時に自分が生まれ育った昭和にたまらない郷愁を覚えた。人々の言葉に出さない出せない思いを、向田さんはなんと巧みに表しているのだろう。水上勉さんのあとがきもよい。向田さんの描く「闇」を「人の生のいじらしさ、いとしさ」と評している。今の時代を向田さんが切り取ったらどんな作品になったのか、知りたい思いが募る。
読了日:02月14日 著者:向田 邦子


青空のむこう青空のむこう
10才で突然事故死してしまったハリーが、自分のいなくなった現世を訪ねる。死の直前、喧嘩をした姉を気遣い、そして次のステージに進むために。10才の視点で語られるので文章もわかりやすく、決して暗くならない。自分がいなくなっても、何事もなかったように暮らしはあたりまえに続いていく。ハリーより遥かに死に近い年齢の自分。そうそう、後のことを気にしても仕方ない。ちゃんと続いていくのさ、と改めて思う。残された人々の心に暖かいものが残るよう、落ち葉が次の命の栄養となるように。大人の死生観にも糧となる話だった。
読了日:02月24日 著者:アレックス シアラー


夜に星を放つ夜に星を放つ
生別あるいは死別の後の切ない思いを星や星座に絡めた短編集。どの話もなんとなく先が読め、以前ドラマで見たような気がしてしまう内容だった。煌めきを感じさせ、心にとどめたいような文章もなかった。直木賞受賞、たくさんの人に涙を流させ心を暖めているらしい・・。うーん、私には合わなかったということなのだろう。
読了日:02月26日 著者:窪 美澄


新装版 あ・うん (文春文庫)新装版 あ・うん
ドラマ・映画、3作全て見ているが原作を読んだのは初めて。水田・フランキー堺、門倉・杉浦直樹、たみ・吉村実子のNHK版が一番雰囲気が近いように思う。血のつながり以上の縁ある男二人はあ・うんの狛犬のよう。門倉に慕われている水田の妻をふくめ微妙なバランスをとって長い年月を過ごしてきた。そのバランスを壊さんがための男二人の偽りのけんか、そしてその真意に気づいている男たちの心情が切ない。まっすぐで温かく分をわきまえ、それでいてどこか無邪気なたみは安らぎそのものだ。作品全体から感じられる戦前の昭和に心地よく浸れた。
読了日:02月28日 著者:向田 邦子