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2022年3月に読んだ本

今月、本に関する本を2冊読みました。

石田衣良さんの「チッチと子」。これは、本を書く側の小説。出版に関する仕組みなどが直木賞受賞者の手で小説として描かれています。もう1冊は早川義夫さんの「ぼくは本屋のおやじさん」。本を売る側の苦労話を読み、あらためて消えつつある小型書店のことを思いました。

この「ぼくは本屋のおやじさん」の中の1節をコピーします。

「本なんていうのは、読まなくていいのなら、読まないにこしたことはない。読まずにいられないから読むのであって、なによりそばに置いておきたいから、買うのであって、読んでいるからえらいわけでも、知っているから、えらいわけでもないのだ。」

「たくさん読んでいますね!」と言ってくださる方がいますが、「読まずにいられないから読む」これなんだなぁ!と納得の数行でした。

 

伊坂幸太郎さんが選んだ短編集2冊、伊坂さんが「短編小説のドリームチーム」と称した作品は、驚きに満ちたものが多く(中にはわからないものも数点ありましたが)これが「伊坂幸太郎」を作ったのか!と思いました。おかげで「読まずにいられない」作者が増えてしまいました。(^^;)


読んだ本の数:11


チッチと子 (新潮文庫)チッチと子 (新潮文庫)感想
はじめて読んだ石田衣良作品。妻を亡くし、小学生の息子とふたり暮らしの作家青田耕平。彼が「直本賞」を受賞するまでの、作家として、父として、男としての心の機微を綴った内容。肝心な父と子の暮らしより、出版業界や直木賞の背景が興味深かかった。いつも本を読むときに、「初版」とか「第○刷」という文字をつい見てしまう。ああ!あの作家、すごいな!と何人もの作家を思い浮かべながら読んでいた。
読了日:03月06日 著者:石田 衣良


東京下町殺人暮色 (光文社文庫)東京下町殺人暮色 (光文社文庫)感想
3月10日に読み終えたこの本の中に、東京下町の大空襲が「火炎」という絵を通じて描かれている。13才だった母は、まさにこのとき家を焼かれ命からがら逃げ出した。だから私は生を受けることができた。画家となったかつての少年東吾と母が重なる。小説に目を戻すと、家政婦ハナさんがとにかく格好よく、ある意味主役とも思える話だった。ものごとを見極める目を持ったこんな高齢者になりたいものだ。
読了日:03月10日 著者:宮部 みゆき


目でみることば 2目でみることば 2感想
今回も大変興味深く楽しく読んだが、思わぬ旅情を誘われた。「関の山」の語源の関宿の山車を見に行きたい!「順風満帆」の語源の帆船を見に霞ヶ浦へ行きたい!コロナが終息すればなぁ!そして「ぐれる」の語源が蛤に由来するとは意外な驚き!それにしても蛤の写真のおいしそうなこと!食欲も多いに刺激された。
読了日:03月15日 著者:おかべ たかし


どうぶつ会議 (岩波の子どもの本)どうぶつ会議 (岩波の子どもの本)感想
今こそ読みたい本。物語のようにはいかないし、国境をなくすことなんてできないけれど、この本が訴える「子供たちのために」あの国の人々に立ち上がってもらえないか。「無益な戦いはやめよう!」と。かわいらしい絵の背景に反戦の思いの込められた絵本。しかし同時に、動物たちの特性やほのぼのした家族の風景も描かれ楽しい。会議の参加者に、絵本から出てきたミッキーマウスや、長靴をはいた猫などもいるのは愉快だった。いい本を読んだ。
読了日:03月16日 著者:エーリヒ ケストナー


小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇 (ちくま文庫)小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇 (ちくま文庫)感想
伊坂幸太郎がどんな小説を「極上の傑作」とするのかと期待しつつ読んだ。芥川龍之介のあまりにも有名な「杜子春」を読めてよかった。それに続くパロディのような一條次郎「ヘルメット・オブ・アイアン」の急展開も笑って楽しめた。井伏鱒二「休憩時間」では昔の血気盛んな学生たちの空気が感じられた。眉村卓「賭けの天才」、唯一既読の宮部みゆきサボテンの花」の2作はやはり好みに合っていた。あまり理解できない作品もあったが、伊坂幸太郎誕生の礎の一部となっているのだろう。1冊挟んで気分を変え「オーシャンラズベリー編」へ。

読了日:03月20日 


丘の上の賢人 旅屋おかえり (集英社文庫)丘の上の賢人 旅屋おかえり (集英社文庫)感想
タイトルは「フール・オン・ザ・ヒル」から来ているのかと読んでみてわかった。「旅屋おかえり」もよかったが、この北海道編も楽しく引き込まれた。「おかえり」と言ってくれるところがふるさと。なるほど!息子たちが来たとき「いらっしゃい」でなく「おかえり」と言ってみようかな。自分自身、生まれ育ったところよりも今、住んでいるところが明らかにふるさとになっている。コロナ禍で旅に出られないが、ふるさとにじっといるのもまたいい。テレビドラマの影響で、安藤サクラさんの顔で声でおかえりが活躍した。
読了日:03月21日 著者:原田マハ,勝田文


JAZZ SONG BOOKJAZZ SONG BOOK感想
懐かしいジャズの名曲27曲。掲載曲順にプレイリストを作って、聴きながら、歌詞を目で追いながら、時に一緒に口ずさみながらページをめくった。なんと豪華な楽しい時間!五味さんの訳詞も、もちろん絵もおしゃれで、これぞ大人の絵本!譜面が載っていた30年前のものより、私はこちらが好みだ。五味さんのエッセイもいい。「中学時代に訳してみたら、勇ましい元気なアメリカが、泣いたり嘆いたり情けない弱々しいところもあることがわかった。普通の連中の国なんだ。」値段に一瞬迷ったが、買ってよかった。末永く楽しめそう!
読了日:03月24日 著者:五味太郎


ゆうれい居酒屋 (文春文庫 や 53-5)ゆうれい居酒屋 (文春文庫 や 53-5)感想
おいしい食べ物を出す店を舞台にした人情話は、現代もの時代ものどちらも今、非常に多い。「食堂のおばちゃん」シリーズも何冊か読んだし、この手の本は今は少しいいかなぁと思っていた。そこへ母から「読んで!」とこの本が送られてきた。なるほど!私が50年前に通学で毎日通ったルミエール商店街、通っていた都立高校、そしてなじみのある店まで実名で登場している。今も、このアーケード街は活気があり、第一書林も健在だ。同じ机を使う定時制の生徒と、文通とまではいかないが、メッセージを送り合ったこともある。懐かしい読書だった。
読了日:03月27日 著者:山口 恵以子


ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)感想
高校生の頃、よく聴いた曲「時計をとめて」「サルビアの花」・・のジャックス早川義夫さんが本屋を開いたことは知っていたが、その著書はなんと40年前に書かれたもの。大型書店の陰でほとんど姿を消しつつある個人書店。その裏話が興味深かった。「風呂屋の番台のように座っていればいい」と著者が選んだ本屋営業のなんと理不尽で困難なこと。まず、欲しい本が、欲しい数、欲しい時に届かないということ、取次店や出版社をリュックを背に買い出しに回るなど、全く知らなかった。「時計をとめて」のアンニュイで魅力的な歌声と結びつかなかった。
読了日:03月29日 著者:早川 義夫


変な家変な家感想
間取り図が好きなのでタイトルを見て図書館に予約した。人気があるのかずいぶんと長いこと待ってようやく順番が来た。間取り図が話の筋に大きな働きをしているとは思えず、しかもホラーは好きではない。親族間の恐ろしい因縁や確執ならば、横溝正史を読む。読む本を選び間違えたようだ。
読了日:03月29日 著者:雨穴


小説の惑星 オーシャンラズベリー篇 (ちくま文庫)小説の惑星 オーシャンラズベリー篇 (ちくま文庫)感想
ノーザンブルーベリー編を読んだときに、これはあとがきを先に読みながらがいいのではと思った。今回、それが正解だった。どの作品も大変楽しめた。特に中島敦「悟浄歎異」には感動した。熱く、能力も高く突っ走る悟空、享楽的な中に秘めたものを持つ八戒、そんな彼らを鋭く見つめながら常に真摯で内省的な悟浄、誰にも胸が高鳴る。そして、もっとも弱く何者にも抗えないのに、高貴な志を失わない三蔵。その寝顔を見て心にポッと火がともるような思いの悟浄。この短編を読んだ後の温もりが、私の胸にもいつまでも残る。伊坂幸太郎さんに感謝したい。
読了日:03月31日 著者: