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2021年11月に読んだ本

本の書評や広告を見ると「あれも読みたい」「これも読みたい」と際限がありません。同時に今、評判の本を手にして「これは読まなくてもよかったかなぁ」と思ったり。とても読み切れないたくさんの本、一生かけても時間は限られているし、そう思って古くから評価され今も残っている作品をまずは読んでみようと思いました。山本周五郎井上靖あたりから、存命ですが宮本輝浅田次郎などオジサン作家、私には変わらぬ引力のある伊坂幸太郎吉田篤弘(読み途中)と男性作家が続きました。


読んだ本の数:8


夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業
俳句初心者の秘英知君と一緒になって、夏井先生の授業を受けた気分。「5音と7音で12音の日記を考え、そこに5音の季語を加える」このアドバイスが初心者にはわかりやすい。私には知識もセンスもないから俳句なんて絶対作れないと思っていたのに、読み終わる頃には「作れるかも?」「作りたい!」という気持ちになってしまった。まわりの景色や生活の様子を、以前より丁寧に眺めるようになった気がする。
読了日:11月01日 著者:夏井 いつき


あすなろ物語 (新潮文庫)あすなろ物語
宮本輝さんに小説への道を開眼させた本ということで手にした。あまりにも有名な井上靖初読みでもあった。「自伝小説ではない」と本人は述べているようだが、作者の精神的な成長の記録と感じた。「明日は檜になろう」という翌檜、主人公梶鮎太は回りを通りすぎる人々を「彼も翌檜」と表現し、自分自身も檜にはなれない「翌檜」と捉えているようだ。多くの人が「明日は檜に」の思いを、秘かに胸に抱えて生きているのではないかと思った。
読了日:11月04日 著者:井上 靖


ホテルカクタスホテルカクタス
図書館のお楽しみ袋で出会った本。豪放磊落な「帽子」、単純で明朗快活な「きゅうり」、真面目で几帳面な「2」、3人は全く性格が異なりながら、絶妙なハーモニーで友情が育っていく。ほとんど階段ばかりが描かれたホテルカクタスという名のアパートは、不思議だが居心地が良さそう。私たちのまわりも、この3人のよう、ホテルカクタスのようであったらなぁ・・。
読了日:11月05日 著者:江國 香織


さぶ (新潮文庫)さぶ
誰の薦めでこの本を読んだのか‥と考えたら、瀬尾まいこさんの「図書館の神様」の中で、読書家の生徒垣内君が本に縁のない教師清に薦めた本だった。瀬尾まいこさんと垣内君にも感謝せずにはいられない。運命に翻弄され一時は人や世間を恨み離れていた栄二が、人足寄場の仲間や役人との暮らしの中で心を取り戻していき、さらには自分を信じて待ち続ける大切な人々のおかげで再生していく。長編だが、ゆっくりと栄二の変化をたどっていくことが心地よかった。人は一人で生きているのではない。
読了日:11月10日 著者:山本 周五郎


花下に舞う花下に舞う
文庫本になるのを待ちきれなかった。最終章前まで「そういうことか」とおもしろくストーリーを追っていたのが、最後に来て裏の裏が暴かれる。いささか無理な繋がりと半分思いながらも、信二郎の推理の鋭さに唖然とし、また、引き込まれる。伊佐治親分、遠野屋清之介同様、私も面妖で厄介なものを見たいという思いが、胸に潜んでしまったようだ。
読了日:11月14日 著者:あさの あつこ


姫椿 (文春文庫)姫椿
ちょっと不思議な話も含めた8編の短編集。タイトル「姫椿」の銭湯で会った老人たちの気概が心地よい。「マダムの喉仏」のケイバーのマダムに会ってみたかった。気高く、美しく、話す言葉も、動作も非の打ち所がなく、奔放さと真摯さがきちんと調和していた「女性」。そしてその姿を妻子や孫たちにはまったく気づかれず、亡くなったあとも立派な男性としての痕跡しか残さなかった。会ってみたかったなぁ!
読了日:11月17日 著者:浅田 次郎


死神の浮力 (文春文庫)死神の浮力
「死神の精度」で様々な人々の死を判定した死神千葉が、今度はじっくりと山野辺一人を調査する。娘を殺された山野辺が、死やサイコパスを考察する場面で心に残る言葉も多い。死ぬまで人間は「その日を摘む」つまり「その日を楽しむことしかできない」「平和に飽くと争いが起きる」そして、寛容と不寛容について。そんな重いテーマの中、相変わらず千葉は飄々と憎めない。彼の「参勤交代はいいシステム」という意見もおもしろく真実味もある。「死が怖くないかどうか先に行って見てきてあげる」という山野辺の父が残した言葉が胸にしみる。後書きで、著者の「僕は死が恐ろしくて仕方ない」という言葉にも同感。その日その日を摘もうと思う。
読了日:11月22日 著者:伊坂 幸太郎


彗星物語 (文春文庫)彗星物語
12人と1匹+ハンガリーからの留学生という大家族の中、飄々とした祖父福造の存在がよいスパイスとなっている。福造登場の場やその言葉が本当に適切でホッとする。自分勝手ででたらめな言葉のようで、酸いも甘いもかみ分けた「老」のパワーを感じた。今の時代、社会にも老人自身にも欠けてきてしまったものかもしれない。常に家族を支える主婦敦子、皆に気を配りすぎる末っ子恭太、自分を犬とは思っていないビーグル犬フック、そして留学生ボラージュも一家の要となっている。昭和の家族模様、いいなぁ!命を彗星のきらめきにたとえ、「さぁ、これからだ!」と動き出す大家族に幸あれ!
読了日:11月28日 著者:宮本 輝