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2021年6月に読んだ本

伊与原新さんという初めての作家に魅了され、3冊立て続けに読んでしまいました。

好みはわかれるかと思いますが、科学的な事象がそれを知った人の心にどんな働きをす

るか、「科学×小説」は私には非常に興味深かったです。本屋大賞と同時に直木賞の候

補にもなり、選者の三浦しをんさん・角田光代さんは高評価でした。一方、浅田次郎

ん・北方謙三さんの厳しい評価もあったけれど、これからも少し注目していたい作家で

す。「SevenStories」はとにかくステキ!「ななつ星」乗ってみたいなぁ!

 

読んだ本の数:9

Seven Stories 星が流れた夜の車窓からSeven Stories 星が流れた夜の車窓から
装幀がクラフト・エヴィング商會ということで手にした本。豪華寝台列車ななつ星」の夜の姿が描かれた表紙を開くと、大写しにされた光る窓ひとつ、そして控えめな星々・・これはいい本に違いない。「ななつ星」を舞台にした5つの物語(井上荒野恩田陸三浦しをん川上弘美・桜木志乃)と2つのエッセイ(糸井重里小山薫堂)どれもが旅愁を誘われる。長い年月を重ねた夫婦の、親子の、そして女友達の物語は、どれもしっとり優しく切なくまた心地よい。豪華な列車に揺られながら、ゆったりとお洒落な旅をしてきたような読後感に包まれた。
読了日:06月03日 著者:糸井 重里,井上 荒野,恩田 陸,川上 弘美,小山 薫堂,桜木 紫乃,三浦 しをん


心淋し川心淋し川
これまでに何冊か読んだ西條奈加さんが直木賞受賞ということで喜ばしい反面意外な気もしていた。本屋大賞ならわかるのだが。読んでみて、物語の奥深さ上質な文章に納得した。心町(うらまち)の崩れそうな長屋の住人は、貧しさに加えて皆、心にやりきれない思いを抱えていた。最終章、差配人茂十の来し方がわかり、彼の長年の恨みが霧消しそうなとき、住人たちの顔にもそれぞれほのかな明りがさしてくるところで安堵した。ただひとり「冬虫夏草」の母、吉のゆがんだ母心が恐ろしくまた切ない。西條奈加さん、これからも読み続けたい作家だ。
読了日:06月06日 著者:西條 奈加


八月の銀の雪八月の銀の雪
直木賞本屋大賞共にノミネートされた作品。地球惑星科学専攻の著者の名を初めて知った。地核・鯨の歌・伝書鳩の帰巣能力・珪藻の美しさ、そして偏西風・原子力発電、まずはその科学的な事実が興味深く引き込まれた。5編の短篇の中で、自暴自棄になったり、道を見失いかけている主人公たちの心にも、「科学」が静かな反応を起こす。その変化がどれも穏やかで心地よい。5編すべて、読後、温かい思いで満たされた。丁寧な下調べに裏付けられた優しく素敵な一冊。同様の作品「月まで3キロ」もぜひ読んでみたい。よい作家と出会えた。
読了日:06月08日 著者:伊与原 新


月まで三キロ月まで三キロ
月のクレーターを天体望遠鏡で見たことがある。雪の結晶も肉眼でもわかるのだと驚いたこともある。しかし、堆積した地層や岩石、ましてや素粒子の話など読んでいてどれだけ理解できたことやら。にもかかわらず、それら科学の話が魅力的で、戸惑っている主人公たちの背中をそっと押したに違いないことはよくわかった。科学知識と、人の心の中で消え残る力の再燃が見事に結び付いた短編集だった。
読了日:06月12日 著者:伊与原 新


SFショートショート (手塚治虫からの伝言)SFショートショート (手塚治虫からの伝言)
子供の頃、夢中になって読んだ手塚治虫作品の数々。そのときと同じワクワクと読後の感動で満たされたのが不思議だ。感性は半世紀の時を経ても変わらぬのかと嬉しくもあった。環境破壊・食料危機・戦争・宇宙人・・どれも古くさいテーマではなく、手塚治虫の先見の明と温かい人間性に改めて驚かされる。どの作品もまるで1本の映画のように奥深く、また、鮮やかだった。
読了日:06月13日 著者:手塚 治虫


お台場アイランドベイビーお台場アイランドベイビー
直下型地震が起きたら故郷東京はどうなってしまうのだろう、それが一番気になり読み始めたが、中心は無国籍児童に関わる問題だった。また「月まで3キロ」「8月の銀の雪」の科学知識を取り込んだ情緒的な短編に魅了されて手にしたので、あまりにも盛りだくさんな内容を読むのに手こずってしまった。デビュー作で力がこもっていたのだろう。他の作品も読んでみようと思う。
読了日:06月18日 著者:伊与原 新


52ヘルツのクジラたち (単行本)52ヘルツのクジラたち
母親の無関心と虐待により心身ともに傷ついた女性と少年の再生を綴った物語。目を覆いたくなるような母親の言動とともに、再生へ導こうとする回りの人の働きに惹かれ一気に読んでしまった。クジラの歌声を聞いてみたくなり、本屋大賞候補の他作品にも登場していたのを思い出す。友人美晴は魅力があるが、主人公貴湖にはあまり感情移入できなかった。最後をうまくまとめすぎたようにも感じ、「52ヘルツのクジラたち」は私としては本屋大賞の中でももっと下位だと思った。
読了日:06月21日 著者:町田 そのこ


春の庭春の庭
芥川賞受賞作や純文学は私には難解なので近づかないでおこうと思っていた。読み始めてから気づいた。芥川賞受賞作だった。この本に関心を持ったのは「水色の家」建物が大きな位置を閉めている作品のようだったから。家にはいつも関心がある。新しい家でもそうだが、むしろ年季の入った家ほど、間取りや住んでいる人の暮らしに妄想を膨らませる。この本の中では、写真集で見た「水色の家」に執着する西と、しまいには彼女と同調する太郎の淡々とした時間が流れる。大きな出来事も起きないが、町や家の描写が鮮やかで、静かな心地よい読書だった。
読了日:06月24日 著者:柴崎 友香


星の旅人: 伊能忠敬と伝説の怪魚星の旅人: 伊能忠敬と伝説の怪魚
婿入り先の家業を繁栄させた後、息子のように若い師に付いて学び、日本中を歩いて測量し地図を作った人。伊能忠敬のエピソードのひとつひとつは、自分が歳を重ねるにつれますます魅力的なものとなっていく。史実に基づいた物語部分も楽しめたが、基礎知識の図説がわかりやすく興味深かった。江戸時代の不定時方、様々な測量機器、緯度経度の測量方、みなおもしろい。経度1度は約111㎞、伊能忠敬の測量は正しかった!この本で詳しい測量の様子を知り、最近雑誌サライ7月号の付録で得た大きな「伊能図」がいっそう貴重なものに思えてきた。
読了日:06月30日 著者:小前 亮