読んだ本の数:6
読んだページ数:1380
偶然女性作家のものばかり、しかも少し時代をさかのぼったものばかりを5冊。
世間が不穏な空気の今、ゆったりと別世界に浸るのは、精神衛生上いいかもしれない。
最後に、いつもの吉田篤弘さん。これも気持ちを穏やかにするのに私には欠かせないア
イテム。たくさん買い込んであるが、丁寧にゆっくり味わって読みたい。
あきない世傳 金と銀(七) 碧流篇 (時代小説文庫)の感想
毎回の波瀾万丈や切ない展開がない分、幸を中心に五鈴屋江戸店の人々の商いへの真摯な姿勢が光っていた。「買うての幸い売っての幸せ」あらためてよい言葉だと感じた。人気役者富五郎の、今は亡き智蔵への友情に胸が熱くなった。幸もお竹もどれほど嬉しかったことだろう。愛らしい結と聡明な賢輔が結ばれることを願いながら、次回を待ちたい。
読了日:02月05日 著者:高田 郁
よこまち余話 (中公文庫 (き37-2))の感想
時空の溶け出す場所というのがあるのかもしれない。「今」を共に生きていなくとも、ふれあう想いはあるのかもしれない。生死によって分かたれても、記憶に残るということは存在が続いているのでは。読後、そんな不可思議な、そして哀しくも懐かしくあたたかい思いで満たされた。時代も場所も定かではない路地、沈丁花に似た甘い香りのする駒江さんの長屋にこのまま留まってしまいたい。
読了日:02月08日 著者:木内 昇
吉原手引草の感想
吉原の人気花魁葛城が失踪、その謎を探る戯作者が廓内の様々な立場の人々に聞き込みをしていく。ミステリーの要素もありながら、吉原という江戸時代独特の風俗のガイドブックの感もありおもしろかった。生まれもってのものに加え、花魁になるまでに身に付けねばならない素養の幅広さにも驚く。多くの人を魅了し味方につけた葛城、14才でみずから廓に入るまで、どのような暮らしをしていたのか、仇討ちを遂げた後の生き方も見てみたい。
読了日:02月13日 著者:松井 今朝子
ネコと昼寝 れんげ荘物語 (ハルキ文庫 む 2-10)の感想
ハードで理不尽な職場に疲弊し45才で「働かない」暮らしに入ったキョウコの「れんげ荘シリーズ」3作目。家賃を含めて10万円で暮らす節約生活も大変だろうが、その心持ちはどうだろうか。有り余るほどの自由な時間、私にはそちらの方が難しいかもしれない。定年退職して毎日が日曜日になった夫、同い年だが働き続けている私。年齢や性別は違うが夫と重ねながら読んでいた。キョウコさん、不安じゃないの?退屈じゃないの?4作目も読んでみようと思う。
読了日:02月18日 著者:群ようこ
散歩するネコ れんげ荘物語の感想
働かず貯金を切り崩して暮らすキョウコも50才になり、また、母の認知症もあり色々考えているようだ。「雨ニモマケズ」の「ホメラレモセズ クニモサレズ」に憧れながら、でも、その人は看病をしたり、手伝ったり、慰めたり、仲裁をしたり、誰かの役に立っていると考えるキョウコ。れんげ荘の美化やコナツの再生にそれとなく気を配る。ネコのぶっちゃんとの嬉しい再会もあり、キョウコの日常が少しずつ動き出す感の4作目は、これまでの中でも最も共感でき次回が楽しみになった。
読了日:02月24日 著者:群ようこ
うかんむりのこどもの感想
「うかんむりのこども」つまり「字」それも「漢字」に関するウィットに富んだ楽しいエッセイ24編。「もう二度としません(槍)」は「風が吹こうが雨が降ろうが槍が降ろうが、二度としない」という強い決意表明。「優柔」は「ぐずぐずしているさま」を表すけれど、「優」も「柔」も「やさしい」「やわらかい」とよいイメージ。心淋しい時には「か」と読む漢字が効く。ゆらめく「火」、「菓子」の「菓」、「過去」の「過」、うたの「歌」、買い物の「買」。戌・狗・犬の違いもおもしろい。「もんじや」で文字を買うとしたら、今なら「凪」かな。
読了日:02月28日 著者:吉田 篤弘