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2024年3月に読んだ本

「罪の声」以外は心安らぐ、どこかしみじみと懐かしい本ばかりでした。

自分としては少し気持ちがいらだっていた3月。読む本で意外と気分が変わるもので

す。図書館の順番待ちの本も含め、新しい年度のスタート月4月も、前向きになれる本

を読もうと思います。


読んだ本の数:8


つるかめ助産院 (集英社文庫)つるかめ助産院
人が斬られたり亡くなることが多い本が続いた後なので、「生まれる」話を読みたかった。数年前に見たテレビドラマもよかったし。自身の2度の出産を思いだし、辛いけれど悪い経験ではないな。もう1度くらい・・などと孫のいる身で思ったり。教会の前に捨てられたまりあ。助産院の先生をはじめ、島の人々の暖かい体温の中で、出産を経てしっかりと再生していく。おいしそうな食べ物もたくさん登場し、心地よく読み終えた。
読了日:03月03日 著者:小川 糸


古本食堂古本食堂
学生時代、神保町にはよく通った。大学の帰りにYWCAで英会話を学んだり、スキー用品店、楽器店、そしてもちろん書店を巡ったり。古書店はもっぱら素通りで三省堂書泉グランデばかりだが。「さぼうる」でコーヒーも飲んだっけ。そんな懐かしい思い出をたどりながらの楽しい読書だった。珊瑚さん・美希喜ちゃんはじめ登場人物が皆、人の心にも自分の心にも誠実に接しているのが心地よい。出てきた書物では、クリスティの「春にして君を離れ」しか読んだことがないのは残念だったが。食べ物も皆、おいしそうで、神保町に無性に行きたくなった。
読了日:03月06日 著者:原田 ひ香


それでも世界は回っている 3それでも世界は回っている 3
「月とコーヒー」そして「それでも世界は回っている」の最終巻。章の番号が1から通しになっている!しかも各巻同じページ数で終わっている!などと細かいことに先ずニンマリ。「時間は大事なものを奪っていくが、悲しみや辛い気持ち苦しみも奪っていく。うまいことできている。」という叔父さんの言葉が絶妙。あちらに行ってしまった人を、ふと近くに感じることがある。オリオがベルダさんを、カナタがハルカを感じるように。最後のイラストの「終列車」がかわいい。しばしば浸りたくなる吉田篤弘さん。今回も心をニュートラルにすることができた。
読了日:03月08日 著者:吉田篤弘


罪の声 (講談社文庫)罪の声
40年前に起き、すでに2000年には時効となっているグリコ森永事件。その細部を調査し、事件の影の人間模様を想像し描いた小説。長編で辟易とするところもあったが、その一つ一つのエピソードがすべて最後に繋がっていくのは見事。犯行に利用された子供たちのその後の人生は大きく分かれ、悲惨だが救いの手をのべる人物がいたことは救いだ。著者も新聞記者だったという。無駄のない適切な文章にその経験がうかがえる。著者の「存在のすべて」と同様、衝撃の後、ささやかだが暖かい光景を残してくれるのもよかった。
読了日:03月13日 著者:塩田 武士


寄る年波には平泳ぎ (幻冬舎文庫)寄る年波には平泳ぎ
年齢がほぼ一緒なので同じ様なことを不満に思い、「うん、そうそう!」と思いながら読み終えた。しかし痛快な言葉はどれも心の中での叫びで「言わないでおいた」となっている。そうか、高齢者たるもの世間にヤイヤイ文句を言わず、心の中で罵詈雑言を並べ立てスイスイと平泳ぎで渡って行くのが無難なのかもしれない。群さんはこうして本を書くことで吐き出せるからいい。「同性の友がいればなんとかなる」と群さんは言う。私も同性同年代の友と怪気炎を吐きたくなった。平泳ぎより私は背泳ぎでプカプカのんびり行くかな。
読了日:03月16日 著者:群 ようこ


舟を編む (光文社文庫 み 24-2)舟を編む
10年程前に映画で見、今、ドラマで見ていることから再読。手元には映画のパンフレットがある。あけぼの製紙が「大渡海」のために作り出した、ぬめり感のある紙が使われている。確かに手触りがよく、目に優しい色をしている。辞書編集者・製紙工場、皆のコツコツとたゆまぬ努力の様子が全編から感じられる。西岡・岸辺が、馬締らの情熱に次第に感化されていく過程も嬉しい。巻末、香具矢さん宛のラブレターは半分も解釈できないが、思いは伝わりほほえましい。楽しく読みながら、言葉を大切にしたいとあらためて思った。
読了日:03月26日 著者:三浦しをん


八月の御所グラウンド八月の御所グラウンド
最後数ページ、京都の夜の熱気の中、遠く大文字焼きを眺めているような感覚に包まれた。「俺たち、ちゃんと生きているか?」という多聞の言葉が、まるで自分に向けられたような感覚も。「火がない」の言葉も心に残る。何でもいい。今、自分の心にある火を灯し続けて生きたい。前編、駅伝の沿道に現れた新撰組も、また、魂を燃やし続けているのだろう。よい本を読んだ。
読了日:03月29日 著者:万城目 学


パンとスープとネコ日和 (ハルキ文庫 む 2-4)パンとスープとネコ日和
ドラマでは何度も見ている作品で、小林聡美さんの雰囲気に浸りたくなり読み始めた。そうそうコレコレ、淡々と静かに流れる、しかし、ぶれない日々の暮らし。回りの人に気を配りながらも、「私は私」のペースを崩さないアキコ、やはり小林聡美さんにピッタリだ。愛猫たろちゃんを亡くす場面は、自身が愛犬と別れ「会いたい!」と泣いた日を思いだし、今、いる子との別れを恐れる。「必要以上に悲しんだり、自分を責めると犬猫は困ってしまう」お寺の奥さん(アキコの義姉でありますように)の言葉を覚えておきたい。
読了日:03月31日 著者:群 ようこ

2024年2月に読んだ本

新選組」月間、とでもいうか、2月は浅田次郎さんの新選組の本ばかり読んでいまし

た。ご隠居然とのんびり暮らす夫に、ある日「私と一緒に闘ってほしい」と言ってしま

いました。何と闘うのか?物価高の中、年金で暮らす日々のやりくりか?夫が結局やめ

られなかった喫煙か?さぁ、私自身にもなんだかよくわからないのだけれど「それがし

と共に闘こうてはくれぬか!」と息巻く妻。ああ!新選組の読み過ぎだ。心が俄侍に

なっている、と苦笑いし少し優しい本を読み始めました。でも、本音かも・・。


読んだ本 4冊

一刀斎夢録 上 (文春文庫 あ 39-12)一刀斎夢録 上
新撰組三番隊長であり大正時代まで生き延びた斎藤一近衛師団中尉に過去や剣について夜毎語る。彼の語る近藤・土方・沖田・永倉・吉村そして少年隊士鉄之助がいい。史実のままとは思わないが、それぞれに胸が熱くなるところは「天切り松」シリーズを思い起こす。「壬生義士伝」を読み、「一刀斎夢録」に飛んでしまったが、下巻に行く前に「輪違屋糸里」を読まねば。新撰組とは離れるが、明治天皇崩御に際し、殉死した乃木希典夫妻の記述には改めて感慨深かった。
読了日:02月10日 著者:浅田 次郎


輪違屋糸里 上 (文春文庫)輪違屋糸里 上
尊皇攘夷の旗のもと、京都へ集められた浪士の中、近藤・芹沢両派がそのまま居残り、壬生浪士となりやがて新撰組へと変貌していく様を、関わりある女たちの目を通して描く。隊士に思いを寄せる島原の女たちの一途な思い、屯所で世話をする女たちの母のような姉のような思い、それらを通して芹沢・近藤・土方・沖田・永倉・斎藤・平山・平間・・それぞれの姿が生き生きと動き出す。憧れの目で見ていた土方の非情さに触れ、平山・平間の思わぬ優しさに触れ、下巻へと進む。
読了日:02月16日 著者:浅田 次郎


輪違屋糸里 下 (文春文庫)輪違屋糸里 下
読み終わって「男気」(おとこぎ)という言葉が頭に浮かんだ。新選組浪士にではなく糸里・吉栄・おまさ・お勝に対して。ちなみに辞書によると「男気=困っている人を見過ごせない・犠牲を払って身をつくす」などとあり「女気=しとやか・優しい」と。う~ん・・。「侠気」の字がいいか。切なく辛い状況の中、いづまいを正し顔を上げて生きる芸妓たち、人としての真っ当で温かい目を失わない屯所の妻たち。こちらまで背筋が延びる思いがした。新選組はともかく、女たちの話はほぼ創作であろうが、よい本を読んだ。糸里・吉栄の後日談が嬉しい。
読了日:02月21日 著者:浅田 次郎


一刀斎夢録 下 (文春文庫 あ 39-13)一刀斎夢録 下
新選組三部作を読み終えた。「壬生義士伝」では男同士の友情や家族への心情に胸打たれ、「輪違屋糸里」では女たちの心意気に背筋の延びる思いをした。本作では斎藤一の死生観や剣についての語りに引き付けられながらも、読むのが最も苦しかった。中でも鉄之助との再会と最期の場面では、予想していたものの辛かった。創作の部分が多いかもしれないと思いながら、浅田次郎さんのストーリーテラーとしての力量をあらためて感じた。
読了日:02月29日 著者:浅田 次郎